人材育成研修で主体的に行動できる人材育成と問題解決能力のある組織づくりを関西から支援します
特定非営利活動法人
マザーズサポーター協会内
メンターマネジメント協会
MESSAGE
先日、十数年ぶりに高校時代の同級生に会う機会がありました。名刺をもらったのですが、それなりの役職についているようでした。
私が人材育成研修をやっていることがわかった同級生は、部下の指導、とりわけ叱り方がわからないという愚痴を言い始めました(苦笑)。パワハラ予防の研修も受けさせられたらしいのですが、ますますどうしていいのかわからなくなったと困っていました。
「俺たちが若い頃は、パワハラ上司なんてゴロゴロいたのに・・・」と。
私が大学を卒業して社会人になったのは、昭和最後の年(昭和63年)でした。確かにその頃は、まだ「パワハラ」という言葉はなく、横暴で理不尽な上司にしごかれながら、仕事を体で覚えていくという部下育成が、まかり通っていたように思います。
そうやって仕事を覚えてきた世代が、今度は部下を育てる立場になって、戸惑う気持ちもわからないではありません。
法貴かおり 女性活躍推進研修風景
「ほめると子どもはダメになる」榎本博明著(新潮新書)によれば、1990年代に「ほめて育てる」という思想が定着してきたということです。また「叱らない子育ての弊害」として、①ストレス耐性が弱い。②自分を振り返る習慣が身につかない。③頑張ることができない心を生み出す。ということが指摘されていました。
そんな叱られる経験が乏しく打たれ弱い人たちを、何とか一人前に育てていかなければならない時代が来ています。大変だけど、「俺はこんなことぐらいで挫けなかった!」などと言っている場合じゃありませんね。
私がまだ社会人経験が浅かった頃のことです。取引先の方に叱られたことがありました。まだ異動したばかりで営業担当として自信のなかった私は、穏やかで優しく、嫌な顔をしないで私の話を聞いてくださるA課長のところばかり訪問していました。
ある時、A課長がいつになく厳しい顔で「僕のところばかりに来ていてはいけない。もっと●●課や△△課へ行かないと。それがあなたの仕事でしょ!」と私におっしゃいました。本当にそのとおりでした。本来行くべき課を訪問するためには、商品や業界についてもっともっと勉強し、様々な質問に答えられるようにならなければならない。そこから私は逃げていました。A課長は、そのことを見抜いていたのでしょうね。
叱るということは、とてもエネルギーのいることです。叱ることで、嫌われる可能性もある。叱る側も覚悟がいります。しかも時代は変わっている。けれども、叱ることが部下の成長を大いに助けることは、確実にあるのだと思います。
「色々大変だけど、諦めずにがんばってね!」と同級生にも言いましたが、部下の育成に悩む管理職の方々にもぜひともお伝えしたいです。
部下育成に必要な正しい叱り方…。
私は短大を卒業後、証券会社に入社し、女性ばかりの営業部隊に、配属されました。
そこでの部下指導は、とても厳しいものでした。
「どうして目標が達成出来ない!」
「どうしてまたミスをした!」「どうして先輩より先に電話を取らない!」
などなど、部下注意の嵐でした。
毎日、夕方になると「新人集まって!」と集められ、その日の行いについて怒られてました。
今となっては、社会人としての基本を教えてもらっていたのですが、「また始まった。早く終われ」と念じていました。
売上のノルマ達成については、更にシビアで、論理的に詰められて、過呼吸で倒れる同僚もいました。
人材育成研修 井出勢津子
現在なら、パワハラで訴えられそうですが、30年前の部下育成はそんな感じでした。
それでも私は、そういう部下指導は、嫌だったので、怒らない先輩・上司を目指しました。
4年目には、20名の女子営業のリーダーになりました。
部下注意をしない優しいリーダーに育成されると、リーダーがなんとかしてくれるだろうと、依頼心が強くなります。ミスをしても怒られないから、同じミスを繰り返します。けじめのない甘えた社会人を作ります。
自立した部下育成には、きちんと叱ることが必要でした。
結果、私は部下のノルマも達成しようと頑張り過ぎて、身体を壊して退職しました。
30年前に正しい叱り方がわかっていれば、部下の能力を伸ばすことが出来たと思います。
自立した社会人になる芽を、私が摘んでしまったと悔まれます。
日々目まぐるしく社会が変化していく中で、改めて叱ることについて考えてみました。
10年ひと昔と言われますが、10年前と現在では、企業が求める人材というのは、ずいぶんと変わってきているようです。
いま、多くの企業で欲しいと思う人材に共通していること。それは「自分で考え行動できる力のある人」です。では、その力はどうすれば育つのでしょうか。企業としては、その力を学生時代に既に身につけていてくれれば、願ったり叶ったりです。しかし、当然身につけていない部下もいるはずです。であれば、上司としてその力を育成していくことも仕事であり、役割でもあります。そのとき、まず基礎となる自立の意識をぜひ育ててほしいと思います。
ここで言う自立の定義は以下のとおりです。
菅野美樹 叱り方実践研修風景
●「自立」とは
自らの人生や仕事において、「自分が選択しているという意識があり、その選択に責任を持っていること。
●「自立した人」とは
一人ひとりが自分で考え、壁を乗り切る力を身につけていること。何か問題が生じたとき、他人への責任転嫁(他責)ではなく、つねに当事者意識を持ってあたれること。
●「成熟(自立)した組織」とは
組織自体に問題解決する能力があり、協働の雰囲気を大切にし、必要なときに改善に向けて、話し合う力があること。 一人ひとりの力が十分に発揮されていること。
この自立の定義は、弊協会で必ず研修や講座のときにお伝えしているものです。
先に述べた、「自分で考え行動できる人」になるために必要な意識です。
たまたま、縁あって上司と部下という関係になり、ひとつの組織の一員としてそれぞれに役割を果たしていくことは分かっていても、部下を育てるということは、実際、容易なことではないかもしれません。年代が違う、常識だと思っていることが、部下にとっては常識ではないこともあります。何か注意や指導をしたからといって、すぐに変化や結果が出るというわけでもないと思います。上司の人からは、「叱れない」「叱りたくない」という声を聞くことも少なくありません。部下を注意して叱って、嫌われたくないと思うそうです。確かに叱るという行為の中には、厳しいことを言わなければならない場面も出てくるでしょう。しかし、本来叱るというのは、上司にとっても部下にとっても苦しいだけではないはずです。なぜなら、叱る目的は、「本人が冷静に自覚して方向性を間違わないように主体的に行動を改善すること」だからです。できていないところを責めるばかりではなく、思い知らせることだけでもなく、日頃から、部下と信頼関係を築いておくことで、この上司になら話せる、安心して心を開いてみよう、厳しいことでも耳を傾けて受けとめよう、と思ってもらえることが大切です。ときには、共に考え少しずつステップアップできるように小さな目標という階段を作り、部下に達成感と自信を経験させ、前向きに進んでもらうことで少しずつ部下が育っていくのではないでしょうか。
そう思えば、叱ることは部下の未来をつくるお手伝いなのです。
現代の変化はまさに激流とも言えます。その中で自立したレジリエンス(折れない心・逆境力)というしなやかな強さを育てて行くことが必要不可欠だと私自身感じています。
この力をぜひ身につけたいものです。
私は自立を促す叱り方を学び、真っ先に思い出した後輩(部下)がいます。彼女はいかにも新人といった雰囲気の可愛らしい20歳でした。
当時、私は指導客室乗務員という立場で彼女とフライトすることが多い日々でした。
航空会社の客室乗務員の仕事は指揮順位がフライト毎に必ず決められます。序列がなければ成り立たない仕事なので、上司や先輩の言うことは絶対という感じがありました。
私は新人の頃に毎日の様に指導されていましたが、厳しい言い方や日によって異なる指導をされても疑問を尋ねることも出来ずにいたところ、ついには悩み過ぎて円形脱毛症になってしまいました。
舩木孝子 人材育成研修の中でも接遇研修、初任者研修を実施
私はその時に、私が指導者になったら一方的に叱るのではなく理由を聞こうと強い想いを持ちました。
そのスタンスで前述の彼女と向き合いました。
ある日、彼女がフライト中に満席でもないのにかかわらず、何故か満席分のおしぼりを用意してセッティングしようとしました。
私は「何故、満席分を準備したの?」と優しく尋ねました。
すると彼女は泣き出してしまいました。
私は訳がわからず、さらにフライト中に泣かせてしまったことが本当にショックでした。
人は皆違う、人は最善の選択をしてると知っていたら…。
効果的な個々に応じた部下指導、効果的な叱り方を知っていたら…。と切に思います。
その後の彼女と私の関係は微妙な関係であった記憶があります。
私は自己満足の部下育成をしてしまっていたと反省しました。
模索しながら、その後も仕事を続けましたが、人材育成の手法の中でも、効果的な叱り方を会得していたらなぁと変えられない過去をつい振り返りました。
「叱る」というイメージの中には、「怒る」と同意語のようにミスをして上司から怒鳴られたり、理不尽に一方的に怒られたりすることもありますが、これは「怒る」ということで「叱る」ではないですよね。
私もサラリーマン生活を振り返ってみると、若いころ部下を指導するときに、よく声を荒げたりした記憶はあります。マンツーマンで指導していたときにこちらの説明を理解してもらえず、つい熱くなって「何でこんなことがわからないのか」と言葉を荒げてしまい、叱るつもりで怒って、女性の部下を泣かせてしまったこともありました。
しかしながら、年とともにあまり声を荒げるような「怒る」ことはなくなりました。それは自分が過去に上司から怒られた体験から来たものだと思います。
自分が怒られた体験の中には、ただ腹が立ち、しかも怒られた内容よりも、怒られたことしか記憶に残っていないようなことが多々ありました。
それは、納得がいかないままに一方的に怒られ、理由を説明しても、上司はまったく聞く耳を持たず、言い訳をするなと言わんばかりに怒鳴られた場合などです。
でも、こういう怒られ方は、憤慨と恐怖とが入り混じった感情が残るだけで、怒られた本人は腹に落ちていないため、表面的には上司に合わしてはいても、まったくと言っていいほど、改善に繋がることはありませんでした。
一方で、ミスを犯したときに何処が悪かったかを考えさせられる言葉で諭された場合は、自分としては叱られた意識はなかったけれど、結果的に自分のミスを受け入れ、二度とミスを犯さないようになったという経験がありました。
実は、それが本当の「叱る」ということだったのだろうと思います。
また、そういう上司の方が何年経っても尊敬する上司として残っていますよね。
最近では、部下がミスした場合には、部下を怒鳴るような「怒る」ではなく、相手に考えさせて自ら気付いてもらう「叱る」という手法を多く用いるようになりました。
人材育成コンサルタントとして活動を始め、もうすぐ20年になります。
常にみなさんからご相談がある内容は…
年上の部下の指導が難しい。
注意してもなかなか響かない。
チームの雰囲気がコントロールできない。
叱り方、注意の仕方が分からない。 自分の気持ちがついていけない。
それぞれの業種によって、状況も違いますが、心悩ましておられる傾向は、そんなに違いはありません。
褒めることだけで部下は伸びるのか…。 そんな話をすると、褒めることにつかれている上司の皆さんは、首を横に振られます。
しかし、大切に育てていきたい部下一人一人。
メンタルヘルスも心配だし、ハラスメントになっても困ります。
喜田菜穂子 人材育成研修風景
信頼してもらって、こちらも信頼して、やっとスタートラインに立てるというものです。
信頼関係は一朝一夕には築けませんが、 上司として意識を変え、行動を変えなければ、信頼される上司にはなれないわけで…。
研修や講座の中で、厳しく注意をしても部下に受け取ってもらえる信頼関係の作り方から、 実際に部下に厳しく指導をしなければならなくなったときの対処法をお伝えし続けています。
自分自身も、日頃お伝えしてるのに、自分の気持ちが先走って上手くいかない時もあり、 そんな時は必ず、「この時間は何を生み出すための時間だったのか」と初心に立ち戻るようにしています。
人材育成、部下の指導は粘りと継続です!!